【獣医師監修】知ってほしい!犬猫の予防歯科の必要性|病気予防のキホン
あなたの愛犬・愛猫のお口の中はどんな状態ですか?
近年では、1歳の小型犬のほとんどが歯周病になっているといわれています。
また、猫も生後9ヶ月頃から歯周病が始まるそうです。
今回は獣医師の藤田桂一先生に、犬猫の予防歯科について教えていただきました。
犬猫と「予防歯科」
「予防歯科」とは、不調が起こってからの治療ではなく、不調が起こる前から予防を大切にすることです。
人だけでなく犬猫にとっても、歯がなくなったり痛みや不快感を感じると生活の質(QOL)が下がります。
また口腔環境の悪化が原因で口内細菌が身体に入り込むと、慢性疾患(糖尿病、心臓・腎臓の病気、脳卒中など)の発症・悪化につながる可能性が高いのです。
“元気で長生き”を実現するためには、飼い主さんが正しい知識を身につけ、犬猫の生涯を通じて歯をトラブルから守り管理する「予防歯科」がとても大切なのです。
キーワードは「ホームケア」「プロケア」
口腔内の健康を守るためには、飼い主さんが日々実践する「ホームケア」と、動物病院での定期的な「プロケア」を組み合わせて実践することをおすすめします。
具体的には、動物病院でお口の状態をチェックしてもらい、まずは必要に応じて処置や治療を受けましょう。
そしてその後、良い口内環境を保てるように定期的な歯科検診と動物病院でのケアを行います。
日々のセルフケアは動物病院の指導のもと、正しい方法と適切なグッズで実践しましょう。
動物病院と飼い主さんが連携することで、犬猫の健康や性格などに合わせた方法、かつ飼い主さん・犬猫の双方に負担の少ない予防歯科に取り組むことができるのです。
特に意識したい口腔トラブル
予防歯科に取り組むにあたって、犬猫で起こりやすい口腔トラブルを知っておくことも大切です。
かかりやすい口腔トラブルを意識することで、症状が起きたときに早めに対処することができます。
犬猫共通:「歯石・歯周病」
引用:フジタ動物病院(歯周病の様子)
歯周病とは、歯垢の中の細菌が歯の表面に付着して、歯周組織(歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨)が炎症を起こす病気です。
炎症を起こしているため、犬猫が痛みを感じている場合がほとんどです。
また口臭がひどいのも特徴のひとつです。
犬の場合:「歯が折れる・欠ける」
引用:フジタ動物病院(歯の神経が露出して赤くみえている様子)
歯が折れたり、欠けたりすることを「破折(はせつ)」といいます。
歯の中には神経や血管が通っていて、その部分が露出することで細菌感染を引き起こし、歯肉や頬が膿んで腫れたり、ひどい場合には皮膚や鼻から膿や出血がみられる場合もあります。
猫の場合:「歯肉口内炎」
引用:フジタ動物病院(猫の歯肉口内炎の様子)
歯肉口内炎は、歯肉と口腔内粘膜に炎症、腫れ、赤みなどがみられる疾患です。
痛みが強く、食欲が低下する場合が多くあります。
キーポイントは「歯周病を防ぐこと」
冒頭でお伝えしたとおり、1歳頃には多くの犬猫が歯周病を患っているといわれています。
つまり、1歳の犬のほとんどに歯周病の初期段階ともいえる歯垢・歯石の付着がみられるということです。
また、歯周病の原因となる歯垢や歯石は、多くの口腔トラブルにも関係していると考えられます。
そのため予防歯科に取り組むうえで、「歯周病を防ぐこと」がとても重要なポイントなのです。
歯周病がひどくなりやすい犬猫
- 小型犬
- 短頭種(犬:パグ、シーズーなど 猫:ペルシャ、ヒマラヤンなど)
- 高齢期の犬猫
- 全身性の疾患によって免疫力が低下している犬猫
- 口腔内のケア不足の犬猫 など
愛犬・愛猫がご紹介した条件に当てはまる場合は、早めに動物病院で診察を受けましょう。
それ以外のワンちゃん・ネコちゃんでも、歯垢や歯石の状態を早めに確認しておくと安心です。
まとめ
「知ってほしい!犬猫の予防歯科の必要性」について、いかがでしたか?
繰り返しお伝えしているように、1歳頃には多くの犬猫が歯周病を患っています。
つまりお口のトラブルは、多くの飼い主さんに“大きな問題”と捉えられていない可能性が高いのです。
その理由はきっと、「ケアが大変」というイメージと「病気と関係している」という事実がまだ多くの飼い主さんに知られていないからだと思います。
ケアが大変だというイメージは、もしかしたらその通りなのかもしれません。
ですが動物病院と連携して取り組めば、飼い主さんの負担を減らす方法を一緒に考えることもできます。
今から取り組めば、将来の愛犬・愛猫の健康が少し変わるかもしれません。
愛犬・愛猫に“ずっと元気で長生きしてほしい”と願う飼い主さんは、ぜひワンちゃん・ネコちゃんのお口の状態を確認するところから始めてみませんか?
気になることがあれば、ぜひお気軽にかかりつけ動物病院にご相談くださいね。
この記事が、愛犬・愛猫の「予防歯科」に取り組むきっかけになれば嬉しいです。
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