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【専門医監修】愛犬からフケが出る|症状・原因・予防法

愛犬とのスキンシップ中に、フケが気になることはありませんか?
ひどくなってくると、病気かな?と心配になりますよね。

今回は、皮膚科専門医の大嶋有里先生に「犬のフケ症(角化症)」について教えていただきました。
フケ症の症状・原因・予防法を知って、愛犬の皮膚の健康を守りましょう。

監修

大嶋 有里 先生

獣医師/アジア獣医皮膚科専門医

犬と猫の皮膚科

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フケ症(角化症)って?

愛犬をなでている時、皮膚や被毛にフケを見つけたことはありませんか?
少しだけなら問題ない場合もありますが、明らかに目立つ場合は「フケ症(角化症)」かもしれません。

フケ症は、「皮膚のターンオーバー*(角化)に異常がある肌」のこと。
体質的なものから、病気や環境、間違ったスキンケアなどさまざまな要因で発症します。

特に皮膚の病気が原因となって、フケ症を発症している場合が多くあります。

* 皮膚のターンオーバー:皮膚内で新しい細胞がつくられて、上へと押し上げられて、最終的に剥がれ落ちるサイクルのこと

具体的にどんな症状なの?

健康な犬でも、皮膚のターンオーバーによって少しのフケが出ることがあります。
ただし、大量といえるほど出ているときには注意が必要です。

明らかにいつもの様子からフケが増えていたり、その他の症状がある場合は、何かしらの病気が潜んでいる可能性があります。

フケ症(角化症)の原因は?

フケが出る原因はさまざまですが、大きく2つのタイプに分けられます。

原因1:遺伝的にフケ症になりやすい体質(先天性)

遺伝的に皮膚のターンオーバーが早い体質の場合です。
アメリカン・コッカー・スパニエルやダックスフンド、ラブラドール・レトリーバー、ジャーマン・シェパードでよくみられますが、他の犬種でもこの体質を持っている場合があります。

この場合は、若いうちから皮膚や被毛に多少のフケがみられ、歳を重ねるごとに少しずつ悪化するケースが多いです。
体質のため完治させることが難しく、定期的な薬浴(治療・状態維持のためのシャンプー)を続けるなど、長い目でうまく付きあっていく必要があります。

原因2:体質とは関係なく、さまざまな要因が関係している(後天性)

乾燥によってフケが出ている場合と、病気によってフケがでている場合があります。
まずは、その乾燥となる原因を2つご紹介します。

  1. 皮膚に合わないスキンケア
    皮脂を取り除く作用のあるシャンプー剤を不必要に使ったり、熱めのシャワーを使って必要な皮脂まで取り除いてしまうと、乾燥を引き起こしてフケが出ます。
    皮膚科専門医おすすめのシャンプー方法は、こちらの記事をご参照ください ↓
  2. 季節性・暖房器具
    空気が乾燥する時期に乾いたフケが出る場合、皮膚の乾燥が疑われます。
    ワンちゃんは、こたつやストーブ、ホットカーペットなどの暖房器具で長時間暖まっていませんか?
    暖房器具は低温で使用する、部屋全体を温めるものにする、ペット用の商品を取り入れるなど、工夫をしてみましょう。

次に、原因となる病気を例として4つご紹介します。

  1. 膿皮症(のうひしょう)
    細菌、主に皮膚の常在菌であるブドウ球菌が増殖することで引き起こされる皮膚の病気です。
    皮膚病の中で最も多く、高温多湿の時期は特に多い病気です。
    主な症状として表皮小環(丸い病変で辺縁に襟をつけたようなフケ)や紅斑(丸い赤み)、膿疱(人のニキビのような見た目)などがあります。
  2. 皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)
    真菌(カビ菌)が皮膚に感染して増殖することで引き起こされる皮膚の病気です。
    主な症状として、脱毛、丘疹(赤いブツブツ)、フケなどが挙げられます。
  3. 疥癬(かいせん)
    ヒゼンダニというダニが感染して引き起こされる皮膚の病気です。
    主な症状として強いかゆみ、フケなどがあります。
    症状が現れやすい場所は、耳のフチ・肘・膝などの部分です。
  4. 甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)
    甲状腺ホルモンが低くなる病気です。
    身体全体に異常がみられますが、皮膚の主な症状として、脱毛やフケ、黒ずみなどがあります。

このように、フケが出る原因は体質から環境の変化、病気までさまざまです。
また、愛犬のためにと行っているスキンケアが思わぬ原因になっていることも。
複数の原因によって、フケが出ている場合もあります。

予防法・適切なスキンケア

体質的にフケが出ている場合は、保湿系のシャンプーや角質溶解作用のあるシャンプー剤を取り入れたり、シャンプー時の水温を35度以下に設定するなど、予防的なスキンケアをおすすめします。

後天的に発症している場合は、フケ症を引き起こしている原因を早めに特定して、取り除いてあげる必要があります。

治療が遅れると慢性化して治療が長引いてしまうことが多いため、異変に気づいたらすぐに動物病院に相談するなど、早期発見・早期治療を目指しましょう。

まとめ

「犬のフケ症(角化症)」について、いかがでしたか?
先ほどお伝えしたとおり、フケが出ている原因は本当にさまざまです。
自己判断せずに、かかりつけの動物病院または獣医皮膚科専門医にご相談ください。

そして、フケ症の治療・予防を目的にシャンプーをする場合は、飼い主さんの他に、獣医師、看護師さんやトリマーさんの三者がシャンプーの効果を検証する必要性があります。
シャンプー前後、また次のシャンプーまでにどんな変化があったのかを全員で観察しましょう。

このように違う視点で効果を検証することで、より愛犬に合った方法や内容で治療・予防を行うことができます。
「冬は、しっかり保湿できる又は角質溶解作用の強いシャンプーを使う+暖房器具を見直す」
「夏は、軽めの保湿のシャンプー又は角質溶解作用のあるシャンプーを使う」
など、ある程度パターンがつかめると、1年をとおして皮膚の状態を管理しやすいですよ。

皆さまがワンちゃんの正しいスキンケアを知って実践してもらえるように、ぜひ下の関連記事も参考にしてくださいね。

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