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【獣医師監修】高齢期の犬と関節炎|シニア犬との暮らし

あなたの愛犬は関節に問題を抱えていませんか?

関節炎は、成犬(1歳以上)の20%以上がかかっているといわれていて、若い頃から高齢期までたくさんのワンちゃんが悩まされている病気です。
特に高齢犬にとっては身近な病気で、生活の質を維持して元気に過ごすうえでは避けられない課題です。

今回はD&C Physical Therapy院長の長坂佳世先生に、高齢犬の関節炎について教えていただきました。

監修

長坂 佳世 先生

獣医師

D&C Physical Therapy 院長

老齢疾患の代表「関節炎」

関節炎は、関節軟骨の劣化により、関節に炎症を起こしている状態です。

犬の関節は、日々の生活で徐々に衰えていきます。
また加齢の他に、先天的に股関節や膝などに問題を抱えていたり、肥満によって関節に過剰な負担がかかっている場合は、若い頃からも症状を出す可能性が高まります。

関節炎や関節症は、一度発症すると完治することはなく、慢性的な痛みを伴います。
多くの犬が抱えるトラブルとして、長期間のケアや対処が必要なのです。

どのくらいの犬が関節に問題を抱えているの?

ある研究によると、10歳以上で44%以上* もの犬の関節に問題があることがわかりました。

ここで注目したいのが「飼い主さんが気づきにくい」ということです。
同じ研究結果で、関節に問題があると分かった犬の飼い主さんのうち、その50%* が、愛犬の関節炎(変形性関節症)に気づいていなかったことがわかりました。

犬は、本能的に痛みを隠すどうぶつです。
特に関節疾患のような慢性的な痛みは行動の変化を感じにくく、歳を取ったからと勘違いしてしまいがちです。
愛犬の行動に次のような変化がないか、よく観察してみましょう。

*犬の痛み.com

関節に痛みを感じているときの犬の行動

  • 散歩に行きたがらない
  • 室内外で段差の上り下りを嫌がる
  • 走ることが少なくなった
  • 立ち上がるのがつらそう、ゆっくりになった
  • 元気がない
  • 尾を下げていることが多い
  • 足を引きずったり、上にあげていることがある
  • 昼間にずっと寝ている、熟睡できていない様子

飼い主さんが「高齢になったから」「歳を重ねて大人しくなったから」と思いがちな変化でも、実はその陰に関節炎や他の病気が隠れている場合があります。

関節炎の治療とケア

関節炎の治療方針は、以前の考え方から変わってきています。

ひと昔前は痛み止めを飲んで、炎症が治まるまで安静にしてもらうことがほとんどでした。
しかし今は炎症をコントロールしつつ、以下の3つを取り入れることを推奨しています。

1. 適度な運動療法(運動機能維持)

関節炎を起こすと、犬猫は痛みからその部位を動かさなくなります。
そうすると、動かさなくなった関節周辺の軟部組織が萎縮し、筋肉も硬くなって、関節軟骨自体もクッション性を失います。
寝たきりの状態に陥る最初のきっかけが、痛みによって痛い部位を動かさなくなることから発生している可能性が多いということです。

適度な運動療法によって関節周囲の軟部組織や関節軟骨に栄養を行きわたらせながら、必要な筋肉を落とさないことで、関節を安定させることができます。

2. 生活環境の改善、サポートグッズの活用(ケガ防止、自立度の向上、精神安定)

関節を安定させ、動きやすくするためには、まず滑りにくくすることが重要です。

愛犬の状態に合わせて、滑り止めや歩行をサポートするためのグッズなどを上手に活用しましょう。
以下は、特におすすめの商品です。

滑り止めグッズ①:ア二サポナックルンア二サポナックルンHERO(株式会社anifull)

特に、足の甲をつけて歩く、フローリングですべってうまく歩けない、爪を擦ってしまう、平らな場所でもつまづきやすいワンちゃんに最適です。

ア二サポナックルンの方は巻きつけるサポータータイプ、ア二サポナックルンHEROの方は履くシューズタイプになっています。

滑り止めグッズ②:おさんぽソックス(株式会社松本義肢製作所:アニマルオルソジャパン) 

お散歩時の他にフローリングの滑り対策や、軽度のナックリングにも有効です。

素材が非常に伸びるため履かせやすく、ワンちゃんの足にフィットします。
気分や愛犬のイメージに合わせて、4色のカラーから選ぶことができるのも嬉しいですね。

歩行補助グッズ①:LaLaWalk STEP(株式会社トンボ )

学生服のトップメーカー「トンボ」が開発した愛犬用の歩行補助ハーネスです。

腰が悪くなったり、脚力が低下したワンちゃんの立ち上がり、腰落ちをサポートします。
飼い主さんが歩行を補助をしてあげることで、ワンちゃんが歩きやすくなります。

歩行補助グッズ②:犬・ネコ用車椅子(adoworks アドワークス)

病気やケガ、加齢などで自力歩行困難になった犬猫の歩行を補助するため、症状・体型に合わせたオーダーの車椅子を製作・販売しています。

3. 栄養管理(適正体重維持、各組織機能維持)

関節炎には、肥満が大敵です。
体重をコントロールして、関節にかかる負担をなるべく軽くすることが大切です。

また、筋肉に必要な栄養素、タンパク質・アミノ酸の適量摂取を心がけましょう。
必要量を食品から摂取するのは大変なので、サプリメントも上手に活用できるといいですね。

全身の健康維持のためには、全体の栄養バランスも重要です。
獣医師と一緒に、愛犬の年齢や体質などを考慮した食事内容を検討しましょう。

まとめ

「高齢期の犬と関節炎」について、いかがでしたか?

関節炎は早期発見が難しく、気がついたときには悪化しているケースも少なくありません。
そのうえ完治することがなく、長い目で付き合う必要がある病気です。

生活の質を維持して、元気で長生きするためには、「自分の足で歩くこと」はとても重要です。
愛犬が関節に不調をかかえていないかどうか、まずは動物病院で診察を受けましょう。

もし関節に不調が見つかった場合は、動物病院での治療に加えて生活環境の改善に取り組みながら、関節が良い状態を保てるようにご紹介した方法をお試しくださいね。

ワンちゃんの健康のために、この記事が参考になることを願っています。
ぜひ他の記事もチェックしてくださいね。

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