
【獣医師監修】愛犬に起こりやすい歯のトラブル4選|病気予防のキホン
犬は、歯にさまざまなトラブルが起こりやすいどうぶつです。
歯周病は広く知られていますが、他にはどんな病気や症状があるのでしょうか。
今回は獣医師の藤田桂一先生に、犬の歯のトラブルについて教えていただきました。

目次
歯の健康=全身の健康
歯周病をはじめ、お口のさまざまなトラブルが全身の健康に影響することを知っていますか?
犬の口腔内には約400種類の細菌が存在していて、デンタルケアを怠ることで増殖して、口内の傷口から体中に入り込むことがあります。
そうすると、細菌が身体の中を巡ってしまい、病気の発症・悪化につながってしまいます。
また歯の状態が悪くなると、「食べる・噛む」楽しみが激減するため、ワンちゃんの精神面にも影響を与えてしまいます。
ワンちゃんが毎日を楽しく、元気に長生きするためには、歯・口のケアはとても重要なのです。
犬に多い4つの歯のトラブル
犬の歯のトラブルのなかで、特に気をつけたい病気・症状を4つご紹介します。
1. 歯石の付着
歯石は、口の中で「死んだ細菌などが石灰化したもの」です。
犬の歯垢は、3〜5日程度で歯石へと変化します。
歯石の中の細菌はすでに死滅しているため、炎症を引き起こす力はありません。
しかし、歯石によって歯の表面が凹凸になり、その上にネバネバした歯垢が付きやすくなります。
歯垢が付いたところは炎症を起こし(歯肉炎)、歯周病へと発展していきます。
歯周病は3歳以上の犬の約8割が発症している病気で、小型犬では1歳で、すでにそのほとんどが歯周病になっています。
要するに、歯周病の初期段階ともいえる歯垢・歯石は、ほとんどの犬の歯に付着していると考えられます。
2. 歯が折れる・欠ける→歯の神経が傷つく・壊死する
歯が折れることを「破折(はせつ)」、歯の中の神経・血管があるところを「歯髄(しずい)」と呼びます。
丈夫なイメージがある犬の歯ですが、実は折れる・欠けるケースが多くみられます。
破折の原因の多くは、硬いおもちゃやおやつを噛むこと、また落下・喧嘩などの外傷です。
破折によって歯髄が露出すると、そこから細菌感染を引き起こし、歯肉や頬が膿んで腫れたり、ひどい場合には皮膚や鼻から膿や出血がみられる場合もあります。
損傷を受けた歯は、折れていない場合でも内部のみにダメージが残っていることがあり、多くの場合で歯の色がピンクや青、茶色などに変化します。
3. 虫歯(う蝕)
犬は、歯の形状や唾液成分の関係で、人よりも虫歯になりにくいどうぶつです。
しかし炭水化物が多く含まれるもの(パン・食糞など)や、糖分の高いものを頻繁に食べると、虫歯のリスクが高まります。
4. 先天性の症状
乳歯が抜けずに残っている、生まれつき歯が多い・少ない、歯の奇形など、生まれつきトラブルを抱えている場合もあります。
他の歯や歯肉などに影響が出づらい場合は対処の必要はありませんが、状態によっては動物病院で処置が必要な場合もあります。
気づいていますか?愛犬の「痛み」「不快感」
ご紹介した病気・症状の他にも、歯に起こるトラブルはさまざまです。
しかし、そのすべてに共通していることは、「痛み」や「不快感」です。
私たち人間でも、歯の調子が悪いと日常生活がままならないほどの痛みや不快感を感じる場合がありますよね。
それは、ワンちゃんも同じです。
犬は自分でお口の健康を管理できないうえに、飼い主さんに言葉でSOSを訴えることができません。
どんなに歯が痛くても、重症になるまで気づいてもらえないこともあります。
日頃から歯のケアでトラブルを予防しつつ、愛犬の歯に変化がないか、痛みを感じていないかをよく観察し、早期発見・早期治療を心がけることが大切です。
ではワンちゃんが歯に痛みを感じているとき、どのような行動の変化がみられるのでしょうか。
犬が歯に「痛み」を感じているときの行動の変化
- 顔を触られるのを嫌がる
- 口周りを気にする
- 元気・食欲がない
- 硬いフードやおやつを食べない
- 少量ずつしか食べない
- 寝てばかりいる など
こんな様子がみられたら、ワンちゃんが歯に痛みを感じている可能性があります。
ワンちゃんは飼い主さんにも不調を隠す場合があります。
普段と違う、小さな行動の変化がないか、よく観察してみましょう。
痛みを感じていそうな場合は、早めに動物病院にご相談ください。
まだ歯にトラブルを抱えていない場合、愛犬の歯のトラブルを防ぐためにはどんなことができるのでしょうか。
歯のトラブルを予防する3つのポイント
歯にトラブルを抱えていない場合に加えて、歯の治療が終わったワンちゃんもぜひこの3つのポイントで予防を実践してみましょう。
1. 定期的な歯磨き
歯磨きによって、歯石の原因である歯垢を取り除きましょう。
歯垢を取り除くためには、物理的な「磨く力」が必要です。
犬の歯垢は3〜5日程度で歯石へと変化し、歯石は歯垢が付きやすい状態になるため、毎日ケアを行うことが理想的です。
2. 硬すぎる食べ物を与えない
歯磨き効果があるからといって、硬すぎる骨やガムは、歯を破折させてしまう恐れがあるので避けましょう。
3. 定期的な歯科検診
3ヵ月〜半年に一度程度、動物病院で歯科検診をうけましょう。
定期的に獣医師に診てもらうことで、トラブルが起きる前に対処したり、トラブルが起きていても早めに対処することができます。
早期発見・早期治療を心がけることで治療期間が短くなり、ワンちゃんの身体の負担だけでなく治療費の軽減にもつながります。
まとめ
「犬に起こりやすい歯のトラブル」について、いかがでしたか?
歯のトラブルについて、なんとなく知っていても、適切な対処がされていない場合が多くあります。
ワンちゃんの歯や歯肉の状態を正常に保つためには、飼い主さんの意識と行動が不可欠です。
この記事が、多くの飼い主さんが改めて犬の歯のトラブルについて意識し、愛犬の歯の状態を確認するきっかけになれば嬉しいです。
何か気づいたことがあれば、お近くの動物病院にご相談ください。
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