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【専門家監修】犬の甘噛み・本気咬みの3パターン|マナーの基礎知識

あなたの愛犬には「噛む(咬む)」という行動がみられますか?
その行動には、どんな意図が込められているのでしょうか。

今回は、犬の行動のプロ 中島秀輔先生に、犬が「噛む(咬む)」パターンとそれぞれの対処法について教えていただきました。
正しいマナーの考え方を知って、愛犬と絆を深めましょう。

監修

中島 秀輔 さん

ワンズアップ株式会社 代表取締役

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犬が「噛む(咬む)」ということ

そもそも、犬とは「噛む(咬む)」どうぶつです。

犬は人のように手を器用に使えないため、多くの場面で口を使います。
つまり「噛む(咬む)」という行動は、犬にとってごく自然な行動なのです。

しかし人と生活するうえで、噛むことが問題になる場合は、問題行動としての対処が必要です。

犬の甘噛みの3パターン

犬の甘噛みは、大体この3つに当てはまります。

それぞれ対処法が異なるため、まずは愛犬がどのパターンに当てはまるかを見極めましょう。
※ 場面によって、複数のタイプが混在している場合があります。

飼い主さんが判断できない場合は、動画を撮影して、マナー教室の講師や行動学の専門家に判断してもらい分析してもらうことをおすすめします。

1. じゃれ噛み(かみかみ)

この行動原因の多くは、日頃の「発散不足」です。
主に子犬〜若い犬の「遊びたい」「動きたい」という心理から起こる行動です。

乳歯の先端は尖っているため、噛まれた部分が赤くなったり、痛みを感じて悩んでいる飼い主さんも多いと思います。
子犬の時期、本来は兄弟犬など同じような体格・体力の犬同士でじゃれあって遊びます。
歯をあてたり、プロレスごっこのように身体をぶつけあったりすることで、咬み方や力加減などの社会性を学びます。

しかし早い時期から兄弟犬と引き離されている場合、この社会性を学ぶ機会が減ってしまいます。
それが、飼い主さんの手や足を噛む「じゃれ噛み」という行動に表れているのです。

● 対処法
多くの場合、体力を発散してあげることで自然と消失します。
「遊びたい」「動きたい」という欲求を満たしてあげましょう。

じゃれ噛みの対処法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください↓

2. 甘え噛み(はみはみ)

この行動原因の多くは「飼い主さんへの甘え」です。
主に子犬の「構ってほしい」「口寂しい」という心理から起こる行動です。
人でいうと、おしゃぶりをしているような状態です。

● 対処法
子犬特有の行動で、多くの場合、大人になるにつれて自然と消失します。
しかし「構ってほしい」「口寂しい」という欲求を満たしてあげないと、問題行動に発展する可能性があります。

愛犬との絆が深まる良いきっかけになるので、優しく撫でる・名前を呼ぶなど、愛犬に愛情が伝わるようなスキンシップを心がけましょう。

3. 本気咬み(がぶがぶ)

この場合、多くの場合で問題行動としての対処が必要です。
本気咬みは、原因によって更に3つのパターンに分けられます。
それぞれのパターンと対処法をご紹介します。

犬の本気咬み(がぶがぶ)の3パターン

本気咬みは子犬だけでなく全年齢でみられる行動ですが、子犬時期の体験が原因となって起こる場合もあります。
皆さまのワンちゃんは、どんな様子で本気咬みをしていますか?

1. 怯えからの攻撃

特に子犬の時期、「怯え」は多くの犬が抱えている感情です。
この「怯え」を解消できない場合、自分を守るために攻撃性が出てくる場合があります。

更に長い間解消できないままでいると、問題行動として悪化していきます。

● ワンちゃんの様子
咬む以外に、怯えているワンちゃんにはこんな様子が見られます。

  • 耳が後ろに傾く
  • 表情がこわばる
  • 姿勢を低くして尾を下げる
  • 全身の毛が逆立つ など

● 原因:社会性不足
犬の社会性とは、いろいろな音や場所、犬や人などに慣れさせることです。
子犬の頃、これらに慣れる機会が少ないことで、怯え・咬む・威嚇などの問題行動が起こります。

また犬がそのような行動をみせることで人がひるむと、それが小さな成功体験となり、次にご紹介する「威嚇からの攻撃」に発展(悪化)する可能性があります。

● 対処法:なるべく早く、社会性トレーニングを始めましょう
無理のない程度から、外部の刺激に慣れさせましょう。
具体的には飼い主さんとの外出、犬の幼稚園に預けるなどがおすすめです。
年齢が若いほど対処が簡単なので、怯えを感じているワンちゃん自身のためにも、ぜひ早いうちに社会性トレーニングに取り組みましょう。

現在では、パピーパーティや犬の幼稚園などのサービスを提供する事業者が増え、犬の社会性の重要性が浸透しつつあります。
しかし海外と比べると、日本はまだまだ子犬時期に犬や人と触れ合う機会が少ないのが現状です。
しかし飼い主さんがそれを理解して、早いうちから愛犬に適切な環境を与えてあげることが大切なのです。

2. 威嚇からの攻撃

「怯え」を解消できないまま、問題行動として発展(悪化)した状態が「威嚇からの攻撃」です。
犬の問題行動のなかでは多くみられるパターンで、お悩みの飼い主さんがたくさんいらっしゃいます。

● ワンちゃんの様子
咬む以外に、威嚇しているワンちゃんにはこんな様子が見られます。

  • 動きを止めて硬直する
  • 目を見つめる
  • 歯を剥きだす
  • 身体の前に重心をかける など

● 原因:間違った方向の成功体験
多くの場合、怯えから威嚇に発展しています。
前述のとおり、間違った方向の成功体験が習慣化している可能性があります。
そして少しずつ、犬は「家庭のリーダー」になっていきます。

犬にとっての「家庭のリーダー」には、家族を守る役割があります。
飼い主さんの行動が犬にとって “頼りない” と感じられると、犬の意識は少しずつ「自分が家族を守らないと」という方向に変化していきます。
そうすることで、犬は常に気を張るようになるため、外部からの刺激に攻撃的になります。
これが、威嚇からの攻撃です。

● 対処法:プロに相談して根本を見直しましょう
既に犬が「家庭のリーダー」になっている場合、マナー教室の講師や行動学の専門家に相談をして、適切な対応を取る必要があります。
犬にとって、飼い主さんが「家庭のリーダー」になり代わるためには、一貫した正しい対応が大切です。

ただし家族内で対応や意見に差があり、犬に対して中途半端な対応になると、犬との関係性を崩す原因にもなりかねません。
飼い主さんが愛犬に対して「いてくれるだけでいい」と感じているなど、行動の改善を強く望まない場合は、家のなかで周囲に迷惑をかけないように過ごすというのもひとつの方法です。

3. 前置きのない攻撃

ワンちゃんの攻撃パターンとして「前置きがない」場合、深刻な状況に陥っている可能性があります。

● ワンちゃんの様子
咬む以外に、前置きのない攻撃をするワンちゃんにはこんな様子が見られます。

  • きっかけがなく、突然咬む
  • 感情に波があり、日によって性格が違う
  • 咬まれると大変な怪我を負う など

● 原因: 病気の可能性、特定不明な場合も…
恐怖体験やトラウマ、心身の病気が複雑に絡み合っているなど、問題が根深い可能性があります。
犬自身でも力を加減できないことが多く、飼い主さんや周囲の人に大きな怪我を負わせてしまう可能性が高いでしょう。

● 対処法:多方面で連携してケアを行いましょう
飼い主さんだけでは解決が難しいため、マナー教室の講師や行動学の専門家、動物病院が連携して、さまざまな角度からケアを行うことが大切です。

まずは動物病院で心身に疾患がないか、特に脳機能や全身の健康に異常がないか検査をしてもらいましょう。
精神的な疾患が疑われる場合でも、お薬が処方される場合があります。
そして心身の治療を進めながら、同時にマナー教室の講師や行動学の専門家と共に行動療法を行います。

この場合、ワンちゃん自身や飼い主さんが苦しい状況に陥っている場合が多くあります。
長期間の治療やさまざまな工夫が必要ですが、少しでも早めに取り組むことで、改善の可能性が高まります。
相談しにくい…と思っている飼い主さんも多いと思いますが、ぜひ一度お近くの動物病院、マナー教室までご相談ください。

まとめ

あなたのワンちゃんは、いまどのような状況ですか?
また今後、どんな状況になっていきそうですか?

犬は理解が早く、とても賢いどうぶつです。
正しい方法で伝えればすぐに理解してくれますが、間違った方法、間違った方向の成功体験を積み重ねてしまうことで、問題行動はあっという間に悪化していきます。

人と犬は、言葉でのコミュニケーションは難しいものの、お互いに心を繋げることができる存在です。
ワンちゃんと飼い主さんの絆を深め、より良い関係を築くためには、ワンちゃんからのメッセージを正しく受け取り、そして飼い主さんからのメッセージを正しく伝えることが大切です。

ぜひ一度、愛犬の「噛む(咬む)」という行動の意図を読み解いてみてくださいね。
不安なことがあれば、お近くのマナー教室や動物病院まで早めにご相談ください。

この記事が、愛犬との関係性に悩む飼い主さんにとって、少しでも役立つをことを願っています。
下の関連記事も、ぜひ参考にしてくださいね。

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