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【専門家監修】高齢期におこる食事の変化|ハイシニアケアの基礎知識

歳を重ねると、ワンちゃんの行動にはさまざまな変化がみられるようになります。
そのひとつに、食事の様子の変化があります。

今回はペットケアホーム「リュッカ」代表 安部里梅さんに、犬の高齢期におこる食事の変化について教えていただきました。
高齢期ケアの考え方を知って、愛犬との暮らしをより豊かにしましょう。

監修

安部 里梅 さん

認定動物看護師

PET CARE HOME Lyuca 代表

プロフィールを見る≫

高齢期に起こりやすい食事の変化

愛犬が高齢期になると、食事の様子にこんな様子がみられることがあります。

  • 食べる時間が長くなる、残すようになった
  • お皿の場所になかなかたどりつけない
  • フードが食べ物だとなかなか認識できない
  • ドライフードのままだとむせることがある
  • 首を下げる姿勢が辛そう、体勢を維持できない など

このような変化が急に起こった場合、飼い主さんは驚いて動物病院を受診することでしょう。
しかし老化が原因の場合は、徐々に行動の変化が表れます。

そのため、飼い主さんが「対策が必要だ」と認識するのに時間がかかってしまうケースがあります。

ごはんを食べなくなる具体的な原因

スムーズな食事を妨げる要因はさまざまですが、主に老化に伴って起きる身体機能(視覚、嗅覚、筋力、脳など)の低下や、病気・不調の影響などが考えられます。

また原因はひとつだけとは限らず、飼い主さんにとって意外な要因が複雑に絡み合っているケースも少なくありません。
そして、食べたくない(食欲がない)のか食べられない(食べにくい)のかを見極めるのは飼い主さんにとってはとても難しい判断となります。

犬にとって美味しい食事であっても、根本となる原因が取り除かれなければスムーズな食事にはつながりません。
原因を正しく特定し、適切な対策を取ることが重要です。

原因を特定するための2つのステップ

ステップ1:動物病院で病気の有無を確認しましょう

まずは、愛犬が病気や不調を抱えていないか、動物病院で健康状態を確認しましょう。

食欲低下やスムーズな食事に影響する病気はさまざまです。
高齢期、特にハイシニアの場合は著しく体調が変化することが多いため、半年〜年に一度の定期健診をおすすめします。

常に体調に気を配り、病気の早期発見・早期治療を心がけましょう。

ステップ2:6つのポイントを確認してみましょう

併せて以下の6つのポイントを参考に、食事内容・環境などに問題がないかを確認しましょう。
そのうえで、動物病院や高齢犬ケアを専門とする施設のスタッフに相談してみることをおすすめします。

前述したように、老化に伴って起こる食事の変化は病気や不調だけが原因とは限りません。
さまざまな角度からワンちゃんの食事の様子を観察することで、スムーズな食事を妨げる、意外な原因を特定することができるかもしれません。

病気や不調がみられない場合に確認したい6つのポイント

※メモや動画撮影で記録を残しておくと、相談時に役立ちます

1. 食事内容・回数

フードの形状、商品名を確認しましょう。

動物病院や高齢犬の介護施設スタッフは、多くのフードの種類とそれぞれの特徴を把握しています。
必要な給与量や栄養の確認に加えて、与えているフードがワンちゃんにとって硬すぎないか、飲み込みづらくないかを客観的に検証する必要があります。

病気対応のフードを与えている場合は、ふやかすなど、食べやすい工夫をお伝えすることもあります。
また高齢期になると消化吸収の能力が衰えてくるため、状況に応じて食事回数を調整する必要があります。

2. 器の形・形状
(大きさ、深さ、高さ、形状、材質 など)

現在使用している食器がどんなものか、確認しましょう。

意外な項目かもしれませんが、食器の形状などが食べにくさの原因になっている場合があります。
現在食事の介助が必要な場合でも、食器の選び方を工夫することで飼い主さんの負担を軽減できるケースもあります。

3. 食べている時の姿勢
(立っている、座っている、伏せ、抱っこ、支えが必要、ふらつく など)
※動画撮影を推奨

撮影のポイント:遠くから全体の様子が分かるように撮影しましょう

この項目は、介護が必要なレベルを知るための目安になります。

「最初は立っているが途中で座ってしまう」など、食べ始め〜食べ終わるまでに変化が起こる場合は、動画を撮影しましょう。
撮影の際は体全体をフレーム内に収めてください。
また、少し離れて撮影した方が、確認する側は状態を把握しやすくなります。

このような行動の変化は、身体に痛みや不快感を感じると変化が起こる場合があります。
病気の早期発見につながる可能性があるため、定期的に観察することをおすすめします。

4. 食べている時の様子
(勢いがある、食べたそうだが進まない、水は飲めるが固形物が食べられない など)
※動画撮影を推奨

撮影のポイント:全体の様子+口元を撮影しましょう

愛犬がどんな様子で食事をしているのか、確認しましょう。
この項目は、ワンちゃん自身の食欲を知る目安になります。

食べたいけど食べられないのか、自分から食事を摂りたがっていないのかなど、食事に対しての意欲を知ることも、原因を特定するための大切な項目です。

5. どんな食べ方をしているのか
(舐めるように、鳥のようにつっつく、押しつける、食器の済に残る など)
※動画撮影を推奨

撮影のポイント:全体の様子+口元を撮影しましょう

若い頃と比べて、愛犬の食べ方にどんな変化が起こっているのかを中心に観察してみましょう。
客観的な検証のためにも、上記の3. 4. と併せて動画を撮影することをおすすめします。

6. 完食するまでに必要な時間
(食事時間)

ワンちゃん自身が食べにくさを感じている場合、食事時間が長くなるケースが多くみられます。
獣医師から特別な指示がない限り、1食あたり20分以内に食べきれているかをひとつの基準にしましょう。

食事の介助が必要な場合は、食事時間が長くなることでワンちゃんと飼い主さんの疲労にもつながってしまいます。

まとめ

愛犬が美味しそうにたくさん食べる様子は、健康の象徴のようにも感じますよね。
そんな様子に元気をもらったり、ほっとする飼い主さんも多いことと思います。

愛犬が歳を重ねるにつれて、食事の様子だけでなくさまざまな行動に変化が表れます。
食事の様子の変化もそんなひとつに感じられ、いつの間にか「歳を取ったからしょうがない」となかば諦めかけている飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

いつまでも元気で歳を重ねるためには、食事から適切な栄養をしっかり摂取することが大切です。
愛犬の小さな行動の変化をよく観察して、体調の変化や不便さを正しく理解し、食事環境や内容を整えてあげましょう。

あなたのワンちゃんが、いつまでも快適な食事時間を過ごせるよう願っています。
ぜひ下の関連記事も参考にしてみてくださいね。

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