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【獣医師監修】まずは知ってほしい!高齢犬とリハビリテーション|シニア犬との暮らし

愛犬の様子を見て「歳をとったなぁ」と思うのはどんな時ですか?
愛犬にはいつまでも若々しく、元気でいてほしいものですね。
今回はD&C Physical Therapy院長の長坂佳世先生に、高齢犬のリハビリテーションの重要性について教えていただきました。

監修

長坂 佳世 先生

獣医師

D&C Physical Therapy 院長

「高齢犬」に持たれるイメージと現実のギャップ

  • 大人になって、あまり遊ばなくなった
  • 歳を取ったせいで一日中寝ている・あまり歩かない
  • 関節炎だから、安静にさせるべき
  • もう高齢だから、たくさん歩かせてはいけない

飼い主さんのなかには、「高齢犬」に対してこんなイメージをお持ちの方がたくさんいらっしゃいます。
しかし、このイメージは正しいものなのでしょうか。

2008年度から2019年度にかけての12年間で、犬は0.9歳、猫は0.4歳寿命が延びている* ことをご存じですか?
*アニコム『家庭どうぶつ白書2021』

一見、大きく寿命が延びている印象は受けませんが、犬猫は1年間で人間の4歳分の年齢を重ねるため、犬や猫にとっては大きく寿命が延びていることになります。
つまり皆さまが高齢犬に対して持っているイメージと、現在の7歳以上の犬の身体機能には、差があるかもしれないということです。

「高齢だからしょうがない」と思っている変化をそのままにしておくと、どんどんと老化の症状が進んでいきます。
愛犬がずっと元気に長生きするために、高齢期のワンちゃんと暮らす飼い主さまに知っておいてほしいことをお伝えします。

「加齢」と「老化」は別のもの

この二つは別のものです。

「加齢」は、誕生からどれだけの年月が経ったかを示すものです。
今日生まれたワンちゃんは、10年後、10歳になっています。

一方「老化」は加齢に伴い、身体の機能が衰えていくことです。

「加齢に伴って老化するから、加齢も老化も結果は同じ」だと思いますか?
愛犬と同じ年齢のワンちゃんを見て、「年相応だな」と思うワンちゃんもいれば「若々しいな」と感じるワンちゃんもいます。
つまり加齢は平等ですが、老化には個体差があるのです。

加齢によって病気にかかりやすくはなりますが、老化自体が病気ということではありません。
要は、老化のスピードを遅らせることで若々しさを保つことができるのです。
多方面から老化を防止することはできますが、なかでも「最後まで自分の足で歩く」ことには、若々しさを保つために重要な役割があることをご存じでしょうか。

動きにくくなると陥る悪循環

高齢になると、動作に関する病気にかかりやすくなります。
例えば神経の病気では、椎間板ヘルニア、腰仙椎不安定症、ウォブラー症候群、変性性脊髄症、腫瘍など、また筋骨格系では、肥満、骨関節炎、腫瘍などが多くみられます。
これらの病気には、痛みや麻痺などの不快感が伴います。

痛みや麻痺などの不快感を感じると、犬はこんな悪循環に陥ります。

  1. 痛いので動きにくくなる
  2. 痛い場所を動かさなくなる
  3. 犬自身が動こうとしなくなる
  4. 動けなくなる

この悪循環の先には心身の機能低下(廃用性症候群)、ひいては寝たきり状態が待っています。
寝たきり状態になると、更に心身の機能低下が進み、認知症や病気の悪化を招きます。
「最後まで自分の足で歩く」ためには、無理なく適度に身体を動かすことが大切なのです。

まずは「リハビリテーション」を知ろう

「リハビリテーション」という言葉は、一度失ったものを再び取り戻すこと・回復することを意味します。
「難しい」「家ではできない」と思う飼い主さんもいるかもしれませんが、イメージされる運動などのほかにも、多方面からのアプローチができるのです。

難しくとらえずに、まずは「リハビリテーション」がどんなものかを知って、できることから始めてみましょう。

リハビリテーションの目的

リハビリテーションの目的は、生活の質(Quality of Life:QOL)の維持・向上です。
生涯にわたって、ワンちゃん自身が快適な日常生活を送ることを目指します。

目的を達成するためのカギ

この目的を達成するためには、「筋肉」を良い状態に保つことが重要です。
あくまでも快適な日常生活を保つことが目的のため、過剰なトレーニングは必要ありません。

「がんばりすぎず、あきらめない」ことが大切です。

筋肉を良い状態に保つための3つのポイント

筋肉を良い状態に保つためには、栄養、運動、休養のバランスが重要です。
それぞれ簡単にご説明します。

1. 質の良い栄養

筋肉にとって、質の良いタンパク質やアミノ酸の摂取が大切です。
サプリメントも上手に活用できるといいですね。

また全身の健康維持のためには、全体の栄養バランスも重要です。
年齢や体質などを考慮しつつ、獣医師とともに身体に合った食事内容を検討しましょう。

2. 適度な運動

先ほどお伝えしたとおり「最後まで自分の足で歩く」ためには、無理なく適度に身体を動かすことが大切です。
立つ、座る、伏せる、排泄する、歩く、走るなどの生活動作をスムーズに行えるようにしましょう。

ワンちゃんが痛みなどを感じている場合は、動作の介助、介助をしながらの動作訓練を行い、生活するうえで必要な筋肉をつけます。

3. 適度な休息

筋肉を動かすことでエネルギーを消耗し、疲労します。
体力を回復させるための休息も、とても重要です。

現在、動きに問題がないワンちゃんの場合は、いまの運動能力(神経機能、筋力、心肺機能など)をなるべく維持することが大切です。
また、安全な生活環境・衛生面でもワンちゃんが快適に過ごせるように工夫をしましょう。

ワンちゃんが痛みや不調を抱えている場合、また飼い主さんが判断できない場合は、一度動物病院で診察を受けましょう。
獣医師目線でのアドバイスを参考にすると、よりワンちゃんの負担が少なく、生活にリハビリテーションを取り入れることができますよ。

まとめ

「まずは知ってほしい!高齢犬のリハビリテーション」について、いかがでしたか?
ワンちゃんの4本の足は、心身の健康を守るための大切な身体の一部です。

いつまでも若々しく元気に過ごすために、まずはリハビリテーションを知って、できることから生活に取り入れてみませんか?

ワンちゃんの健康のために、この記事が役立つことを願っています。
ぜひ他の関連記事も参考にしてくださいね。

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