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【専門家監修】高齢期の犬猫と暮らすということ|ハイシニアケアの基礎知識

「少しでも長く、そばにいて欲しい」
それは愛犬・愛猫と暮らす飼い主さん、みんなの願いですよね。
しかし、そこには避けられない「老い」という現実があります。
今回はペットケアホーム「リュッカ」代表 安部里梅さんに、犬猫の高齢期ケアの心構えについて教えていただきました。
高齢期ケアの考え方を知って、愛犬・愛猫との暮らしをより豊かにしましょう。

監修

安部 里梅 さん

認定動物看護師

PET CARE HOME Lyuca 代表

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犬猫の高齢化に伴う現実問題

どうぶつ医療や生活環境の向上によって、近年、犬猫の寿命は飛躍的に延びています。
それはとても嬉しいことですが、現実的な問題として「犬猫の高齢化に伴う飼い主さんの負担」が浮かび上がってきています。

ひと昔前の人の介護では、「家族がお世話をするのが当たり前」という風潮のなかで、ご自身の時間や生活の大半を費やして疲弊していくご家族が多くいらっしゃいました。
しかし現在では福祉事業(デイサービス、訪問介護、老人ホームなど)の拡大・普及により、人の手を借りる介護への後ろめたさは少しずつ無くなってきています。

しかし犬猫の介護については、いまだ誰に手を差し伸べてもらってよいか、多くの飼い主さんが悩み、苦しんでいる状況です。

介護は少しずつ閉鎖的になってしまいがちなものですが、これだという正解はありません。
すでに皆さまがお持ちのスキルや引き出しのなかに、ご紹介する考え方を少しでも取り入れていただき、愛犬・愛猫との暮らしをより良くするきっかけにしていただけたら嬉しいです。

「完璧を目指さない」「できなくても悔やまない」

人の性格や特性はさまざまです。
そのなかで、愛犬・愛猫が介護状態になったときに特に苦しむ傾向のあるタイプの方がいらっしゃいます。
それは、「完璧主義の方」や「愛情が深すぎる方(依存)」です。

完璧主義の方は、ご自身が “こうであるべき” ということを完璧にこなしたうえに満足があり、また愛情が深すぎる方は辛い現実を受け入れられず、ご自身が “こう思いたい” というように現実を変換してしまう、といった傾向にあるようです。

「完璧を目指さないこと」「できなくても悔やまないこと」が介護の基本です。
例えば、介護をするうえでいつの間にか「私はここまで自分を犠牲にして、この子のためにやってあげている」といったご自身の満足感を得ることが目的になっていたり、心配のあまり、“自分で食べたい” “自分で歩きたい”というような自立を阻止しているケースがあります。

こういった状況は、介護を受ける側の犬猫の気持ちを置き去りにしているだけでなく、いつ終わるかわからない介護生活によって、飼い主さんご自身の心身の疲弊にもつながっていきます。

「愛犬・愛猫は大切な家族」ということは紛れもない事実ですが、犬猫にとって最適なケアを行うためには、まず飼い主さんの心の健康を保ち、正しく現実を受け止めることが大切なのです。

すべてをひとりで抱え込まない体制をつくりましょう

前述したように「犬猫の介護についてどこに相談したらよいのか分からない」、またそれ以前に「自分で何とかしないといけない」と思い悩んでいる飼い主さんが多くいらっしゃいます。

愛犬・愛猫が目を離せない状態になることで、飼い主さんの生活は急激に制限されます。
逆に飼い主さんの生活を優先しなければならず、愛犬・愛猫へのケアを制限せざるを得ないことに、大変な心苦しさを感じている方もいらっしゃるでしょう。

愛犬・愛猫に介護が必要になった際は、ぜひお近くの動物病院や高齢期の犬猫ケアを専門とする施設にご相談ください。
人の介護でも、介護レベルによって適切な施設やさまざまなサービスが受けられる時代です。それは犬猫も同様で、介護を受ける側にとって有益であるケースも多くあります。

飼い主さんが多くの選択肢を持ち、すべてをひとりで抱え込まない体制をつくることが重要なのです。

「犬猫の幸せ=飼い主さんの幸せ」

犬猫の介護は「飼い主さんがいかに疲れずに最期までのりきれるか」がテーマだと考えます。
一見、飼い主さん目線だと感じられるかもしれません。

しかし介護される人と同じく、愛犬・愛猫にとっても「自分が大変な負担になっている」と感じられる現実や、いつも笑って優しかった飼い主さんが毎日辛そうで暗い顔をしているのを感じたらきっと悲しいことでしょう。

大変な介護生活や最期が近づいてきている大切な子に、楽しそうに、そして笑顔で毎日を送るなんてできるのだろうか…
そうです。大変なことなのです。

ですが、かいがいしく自分の身を削ってお世話をしたり、あれやこれやと悩みすぎてしまうような「やってあげてる介護」「責任感の介護」よりも、動物が最期に目に焼き付けて旅立っていくのに必要なのは、飼い主さんのとびっきりの笑顔と優しい声だということを忘れないでください。

さまざまな考え方はあると思いますが、犬猫にとって大好きな飼い主さんが元気で、そして笑顔で接してくれることがなによりの喜びなのではないでしょうか。

それを実現するためには、時に、思い悩む気持ちを外部の人に共有することも大切です。
動物病院や高齢期の犬猫ケアを専門とする施設のスタッフであれば、適切なアドバイスを受けられるだけでなく、一緒になって悩み、考える「戦友」になってもらえるはずです。

犬猫の幸せを思うのと同時に、ぜひご自身の幸せや生活も大切に考えてみてくださいね。

まとめ

愛犬・愛猫の介護は、すべての飼い主さんにとって直面するかもしれない現実です。

「先の見えない、愛犬・愛猫の介護に心身ともに疲れている」
「気分転換もできず責任感に押しつぶされそうになっている」
いま、そんな状況に陥っていませんか?

また今は愛犬・愛猫が介護状態になくても、将来へ漠然とした不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

愛犬・愛猫との暮らしのなかで、まず大切なことは、深刻な介護状態にならないために若いうちからのさまざまな予防や健康管理を行うことです。
そのうえで介護が必要になった際は、ぜひ今回ご紹介した考え方を参考にしてみてくださいね。

この記事が、飼い主さんに少しでも役立つことを心から願っています。
ぜひ下の関連記事も参考にしてみてくださいね。

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