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【獣医師監修】犬猫の歯・口の健康がもたらす4つの効果|病気予防のキホン

犬猫のお口の健康が、全身の健康や老化に影響することを知っていますか?
今回は獣医師の藤田桂一先生に、犬猫のお口の健康について教えていただきました。

監修

藤田 桂一 先生

獣医師

フジタ動物病院 院長

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人と同じく、犬猫にとっても「歯周病は万病のもと」

人では、「歯周病は万病の元」といわれていることを知っていますか?
その理由は、口内細菌が身体に入り込むことで、さまざまな悪影響を及ぼすことが分かっているからです。

具体的には、歯周病は慢性疾患(糖尿病、心臓・腎臓の病気、脳卒中など)の発症・悪化につながります。

人と犬猫では歯の構造や本数こそ違いますが、歯周病が病気の引き金になるという事実は同じように考えられます。

犬猫のデンタルケアの現状

前述した慢性疾患は、特に高齢期でかかりやすい病気です。
人では高齢者のデンタルケアが重要視され、さまざまな取り組みがされていますが、犬猫ではどうでしょうか。

犬猫は自分でお口の健康を管理できないため、その状態は飼い主さんの意識と行動に依存します。

近年では犬猫と飼い主さんの距離が近くなり、愛犬・愛猫の口臭や歯石に気がつく方も増えています。
またペットショップにデンタルケアのグッズコーナーが広く確保されていたり、多くの動物病院で注意喚起が行われるなど、飼い主さんの目に触れる機会も多くなってきました。

しかし動物病院に来院される頃にはかなり症状が進んでいて、抜歯せざるをえないケースも少なくありません。

2019年のペット保険会社の調査で、犬猫ともに歯周病・歯肉炎の処置が手術理由の1位*となっていることからも、予防的なケアの普及には多くの課題があるといえます。

*『家庭どうぶつ白書2019』第2部:どうぶつ医療を取り巻く環境

犬猫の歯・口の健康がもたらす4つの効果

1. 病気予防

慢性疾患は全身状態を悪化させ、健康寿命(日常生活が制限されることなく生活できる期間)だけでなく、寿命さえも縮める可能性があります。

しかし正しいデンタルケアを続けていれば、少なくとも歯周病菌が原因となって発症する病気は防ぐことができます。

最近では、237万頭の犬の寿命に関する因子で、年に一度の歯垢・歯石除去を行うことで、死亡リスクが18.3%も低下したという報告もあります。

2. 認知症予防

食べ物を噛んで飲み込むという行動は、脳へ強い刺激を与え、活性化に役立ちます。

人では、自分の歯でごはんを食べることが認知症の予防につながることが分かっています。

人において歯周病の影響でスムーズに噛めない、また抜歯によって歯がなくなると、脳への刺激が少なくなり、認知症のリスクを高めてしまう恐れが報告されています。

3. 栄養状態・全身の健康維持

歯周病によって口に痛みや不快感を感じたり歯がなくなると、食欲が低下し、栄養不足に陥る場合があります。
その結果、筋肉、免疫、代謝などの機能低下を引き起こします。

口内環境を整えることは、食欲、栄養状態、身体機能の維持にもつながります。

4. 消化のサポート

食べ物を噛むことで、唾液の分泌が促されます。

唾液には消化に役立つ酵素などが含まれています。
食べ物を噛んで唾液と混ぜ合わせてから飲み込むことで、消化を助け、胃腸の負担を軽減します。

犬猫が注意したいお口の病気

犬は人よりも虫歯(う蝕)になりづらく、猫では虫歯は確認されていません。
ただし、犬猫それぞれになりやすいお口の病気があります。

犬の場合

犬の歯は歯石が付きやすく、歯周病になりやすいことが特徴です。

3歳以上の犬の8割以上が歯周病になっていると言われていますが、現在小型犬では、1歳であっても、そのほとんどが歯周病であると報告されています。

また遊びの最中に歯が欠けたり、折れることもあります。

猫の場合

猫も犬と同じく、歯周病になりやすい特徴があります。

また猫の歯周病と併発する病気としては、歯肉口内炎(舌や口内の表面部分に炎症を起こす病気)、吸収病巣(歯がとける原因不明の病気)が多くみられます。

お口の病気を予防するポイント

犬猫が共にかかりやすい歯周病は、特に予防を心がけたい病気です。

歯周病の一番の予防法は「定期的な歯磨き」です。
歯の汚れ、つまり歯垢を取り除くには「磨く」という物理的な力が必要です。
犬では3〜5日、猫では1週間程度で歯垢から歯石へ変化するため、毎日歯磨きを行うのが理想的です。

またおやつを与える場合は、非常に硬い形状のもの(ヒヅメ、豚の耳、アキレス腱、鹿の角、非常に硬いガムなど)は、歯を折る原因になるため避けましょう。

併せて、動物病院で定期的にお口の状態をチェックしてもらうと安心です。
歯周病やかかりやすいお口の病気の有無を確認してもらいましょう。

おうちでのケアが難しい場合、また既に歯石がたくさん付いているなど、症状がある場合は、早めに動物病院にご相談ください。

まとめ

「犬猫の歯・口腔の健康がもたらす健康効果」について、いかがでしたか?
歯やお口の健康は、つい疎かにしてしまいがちですが、永く健康で過ごすためには抑えておくべき大切なポイントです。

まずは飼い主さんが愛犬・愛猫のお口の健康の重要性を知って、そして愛犬・愛猫のお口の状態を確認してみましょう。
何か気づいたことがあれば、早めに動物病院にご相談ください。

ぜひ下の関連記事も参考にしてくださいね。

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