【獣医師監修】気づきにくい!?愛猫の歯肉口内炎|原因・症状・予防法
猫の口腔トラブルのひとつ「歯肉口内炎(しにくこうないえん)」。
実は、あまり飼い主さんに知られていない病気なんです。
最近食欲がないな…ドライフードが食べづらそう…
愛猫にそんな変化があったら、もしかして症状のサインかも!
今回は獣医師の藤田桂一先生に、猫の「歯肉口内炎」について教えていただきました。
猫の歯肉口内炎の原因
「歯肉口内炎」は、歯肉(歯茎部分)の粘膜に起こる炎症の総称です。
その原因はさまざまで、はっきりと解明されてはいませんが、こんな要因が関わっていると考えられます。
- カリシウイルス
- 免疫的な異常
- 歯垢・歯石の付着 など
口腔内は食事や呼吸などで、普段からウイルスや細菌などが付着・侵入する可能性が高い場所です。
正常な口腔環境は、口腔内微生物と生体の組織防御機構の均衡で維持されています。
しかし、外界からの微生物の侵入や何らかの体内における変化により、これらの均衡が崩れると口腔内に炎症を引き起こすことが考えられます。
その疾患の一つが「歯肉口内炎」です。
猫の歯肉口内炎の症状
引用:フジタ動物病院(猫の歯肉口内炎の様子)
このように、舌や舌の奥両側・頬・口唇の粘膜、歯肉などに腫れや赤みがみられます。
発症のサインと行動の変化
「歯肉口内炎」を発症すると痛みや不快感から、主にこのような行動の変化がみられるようになります。
- 口元を気にするような仕草をする
- 毛づくろいをしなくなる
- 食欲がなくなった
- 食欲はありそうだがうまく食べられない
その他にもこんな症状・様子が現れることがあります。
・よだれや口からの出血
・口臭
・下顎リンパ節の腫れ
・口の痛み
・体重減少
・元気消失 など
引用:フジタ動物病院(猫の歯肉口内炎の様子)
また見た目にも気づきやすい変化として、前足の汚れが挙げられます。
猫が口に痛みや不快感を感じると、よだれの量が多くなったり、前足で口をぬぐうような仕草をするため、前足が汚れやすくなります。
このような行動の変化やサインがみられたら、「歯肉口内炎」を疑ってみましょう。
愛猫の歯肉口内炎に気づきにくい理由
犬はハァハァと口を開けて息をすることが多いため、比較的飼い主さんがお口の中を観察しやすいといえます。
一方ネコちゃんは身体がしなやかで逃げ上手であったり、嫌がって引っかかれるといった理由からデンタルケアに課題を感じる飼い主さまが多く、普段からお口の中を見る機会が少ないため、「歯肉口内炎」の早期発見が難しい場合が多くあります。
ご紹介したような行動の変化やサインがみられたら、早めに動物病院へご相談ください。
3つの予防ポイント
すでにご紹介した症状があり、歯肉口内炎が疑わしい場合は、まず動物病院で診察を受けましょう。
もし現在症状がない場合は発症しないために、また治療後には再発しないために、ご紹介する3つの予防法に取り組みましょう。
歯科検診を受け、歯のケアを行う
3ヵ月〜半年に一度ほど、動物病院で歯科検診を受けましょう。
定期的に獣医師に診てもらうことで、トラブルが起きる前に対処したり、トラブルが起きていても早めに対処することができます。
またおうちでは難しいデンタルケアを検診と一緒に済ませられたり、プロが推奨するケア用品を教えてもらえるといった大きなメリットもあります。
「歯肉口内炎」の原因には歯垢や歯石の付着が関係している可能性が高いため、歯垢や歯石が付かないためのケアが大切です。
栄養状態や生活環境を見直して免疫力を高める
良い栄養状態を保つことで、身体のバリア機能が高まります。
年齢や体調に見合った食事内容になるよう、定期的に見直しを行いましょう。
併せて、免疫を維持するためには適切な運動や睡眠、体重管理など、全身の健康管理も重要です。
ワクチン接種でウイルス感染を防ぐ
ウイルス感染を防ぐためには、ワクチン接種が有効な場合もあります。
ただしネコちゃんの体調や生活環境などの条件によって、その必要性やワクチンの種類などが異なります。
詳しくは、かかりつけの動物病院でご相談ください。
まとめ
「気づきにくい!?愛猫の歯肉口内炎」について、いかがでしたか?
ネコちゃんは、飼い主さんにも痛みや不調を隠す習性があります。
そのため口内炎を患っていても、愛猫の小さな行動の変化は見つけにくいものです。
最近寝てばかりいる、食事が進まなくなったなど「歳を重ねたからしょうがない」と勘違いしてしまいがちな変化の陰に、「歯肉口内炎」をはじめとする意外な病気が隠れている場合があります。
たかが「歯肉口内炎」、されど「歯肉口内炎」。
なるべく早く愛猫を痛みや不快感から解放するためには、飼い主さんがこの病気について知り、早めに気づいてあげることが大切です。
そして「歯肉口内炎」と診断されたら、早めに動物病院で処置や治療を受けましょう。
主な治療として抜歯(歯を抜くこと)を行うことになりますが、高い確率で治癒に向かい、快適な状態で過ごすことができるひとつの選択肢です。
気になることがあれば、かかりつけの動物病院にご相談ください。
この記事が、愛猫のお口の健康をチェックするきっかけになれば嬉しいです。
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